SNEP (28)

 
 原田正純先生がお亡くなりに
 なりました。心よりお悔み申し上げます。
 
 本当の支援とは何かについて、
 水俣病の歴史から学ばなければならないことが
 まだまだたくさんあります。
 ○
 スネップの第23回で紹介した
 たちかわ若者サポートステーションの
 井村良英さんからメールをいただきました。
 
 スネップについてのご自身の感想も
 述べられていたので、井村さんの許可を 
 得て紹介します。尚、そのなかで触れられている
 方々からもご紹介の許可をいただいています。
 ○
 玄田先生
 お元気ですか?
 たちかわ若者サポートステーションの井村です。
 先日はHさんとの対談をブログで取り上げて
 いただきましてありがとうございました。
 「スネップ」と聞いてまず思い出したのが
 Hさんたちのような、家族という支え手の
 いない若者たちのことでした。
 私も若者の自立支援の仕事をするまでは、
 「スネップ」の状態にある人に触れ合うことなかったので、
 知る機会はないけど知ってみたい、
 という方に現状をお届けしたい、と考えていました。
 その想いを受け留めていただけたようで嬉しかったです。
 なぜ、孤立している方に通常はなかなか出会うことができないのか。
 それは、孤立している方ができるだけそのことを知られたくない、
 何とか克服するまでは!と思って過ごしておられるから
 だと私は思います。
 私が勤めているたちかわ若者サポートステーションは
 厚生労働省からの委託事業ですが、
 年間延べ利用者は8000人を超えています。
 ハローワーク一歩手前の若者(15歳~39歳)が
 職業的自立のための相談にやってくるのですが、
 Hさんのように社会的に孤立している無業者の方たちも
 多くいらっしゃいます。
 最初は孤立していることはわかりません。
 Hさんも対談の中で、
 一人でどのような一歩を踏み出してよいのかがわからなくなり、
 自暴自棄になってしまった事がある、
 と告白されておられましたが、私たちが出会う
 それらの方々はまるで、
 負うことのできない荷物を背負わされて歩く荷物の運び人
 のようだなぁと感じることがあります。
 先日、17歳の少年から
 「3日間ご飯を食べていません、助けてくれませんか。」
 と電話がかかってきました。
 その少年は2歳の時から児童養護施設で暮らしていましたが、
 お母さんはいます。
 彼は高校を中退しているのですが
 中退してしまうと、実は児童養護施設では
 暮らしていくことができません。
 住むところもなく、頼る人もない中で連絡をしたお母さんに
 「あなたにできることは何もない」
 と言われ、私たちのところに電話をしてきました。
 Hさんとの対談の中でもちらりと話が出ていますが、
 「2週間ご飯を食べずに過ごすことは死ぬより辛いことだった」
 とホームレス時代のことを教えてくださった31歳の男性がいます。
 その彼も実は故郷に家族がいますが頼ることができない事情があります。
 若者支援の現場にいても、家族が家族を支えきれない時代に
 来ていることを感じています。
 そして家族という支え手がなくなった時に、
 背負わされる荷物が突然あまりにも重くなるということも。。。
 家族という支え手がいなくなること、
 家族がいたとしても支え手となり得ないこと。
 想像しづらいことかもしれませんが、実は
 誰の前にもあることだと若者支援の現場で感じています。
 先生はいかが思われますか?
 井村良英
 *17歳の少年、31歳の男性からはお話を伺った時に
 お話を公開する許可を得ています。
 ○
 スネップには、
 家族しか頼りにできない「家族型」
 と
 家族すら頼りにできない「一人型」
 がいます。
 私は、井村君から話をうかがう前は
 より深刻なのは、実は家族型ではないか
 と思っていました。
 というのは、家族型スネップは、
 仕事を探していないことも多く、
 インターネットなどで社会とつながっていることが
 抜きん出て少ない傾向があったからです。
 それに対して、一人型スネップは、
 統計的には、非孤立無業以上に
 職探しをしたり、インターネットを活用している
 ことも多かったからです。
 しかし、統計はあくまで全般的な傾向を
 明らかにするもので、一人ひとりの違いを
 知るには限界があります。平均すれば
 職探しをしたりしていることも多い一人型
 のなかにも、働くことをあきらめている人は
 少なからずいるのです。
 統計の数字の裏に隠された苦しさ、
 井村さんの言葉を借りれば、家族からも
 孤立し、たった一人で
 「負えない荷物を負わされているかのような
 苦しさ」を感じている人たちの姿を
 見過ごすところでした。
 井村君、貴重なお話をどうもありがとう。
 ゲンダラヂオでは、支援現場などで
 日々スネップ状態の人たちと向かいあって
 いる方の実際の声をご紹介させていただければ
 と思っています。実名でも、匿名でも結構です。
 ぜひともスネップについてご意見やご感想を 
 genda_radio@yahoo.co.jp
 までお寄せください。