SNEP (31)

 お便りが届きました。
 ○
 私は現在、通所型の知的障害者福祉施設
 に勤務しています。私が勤務している施設には、
 養護学校や特別支援学級からの卒業者が
 入所することが多いです。養護学校や特別支援学級の
 卒業者が、私の勤務している施設のような福祉施設で
 体験入所をして入所に至るのですが、重い障害がある
 人の場合に、入所が拒否されてしまう場合があります。
 具体的には、重い自閉症で通所が困難な場合や、
 他の利用者に対する他害行為がある場合に
 入所が拒否されてしまう場合があります。
 やや一般的なことですが、障害者雇用で働いている
 人が仕事を辞めた(もしくは辞めさせられた)場合に
 自分の家で孤立してしまう場合が多いと言われています。
 養護学校や特別支援学級では、卒業生に対する
 支援をどのように行うかが一つの課題になっています。
 あと、私の印象論的な考えですが、社会における
 希望や期待感を生み出す力が減退していることが
 SNEPを生み出す一因になっているように感じられます。
 働いてお金を稼いでも、お店(市場)に魅力的な
 商品がなく、がっかりしてしまうことが目立っています。
 また、最近、大手テレビ局のドラマ番組が連続して
 低視聴率で打ち切りになったように、自己目的による
 商品・作品の作成により、市場に対する失望感が
 増大しています。「自分の外に何か面白いものがある」
 という希望や期待感が減退していることが、
 SNEPを生み出している一因になっているように
 思います。
 最後に、支援者の一人として、孤立して無力化している
 人を支え、力を回復させることができる支援者としての
 力量を上げることができるように努力していきます。
 追伸) 
 以前、生活保護を担当しているケースワーカーの
 話を聴く機会がありました。現在、福祉事務所には、
 様々な要因によって就労意欲を失っている人が
 訪れているそうです。具体的には腰痛やうつ病など
 の疾病や怪我を負っている人、家族関係に問題を
 抱えている人など、多様で複合的な課題を
 背負い、就労意欲を失った人が、福祉事務所に
 訪れているそうです。多様で複合的な課題を
 背負った人を、どのようにして支援するかが 
 課題になっています。
 あと、貧困者を支援するシェルターを運営している
 人の話を聴く機会が以前ありました。貧困者を
 支援するためには、実態調査を行うことと、
 支援者の力量を高めることが大切とのことでした。
 貧困者の抱えている多様で複合的な課題を
 把握するためには、貧困者の実態を調査し、
 支援者の力量を高めることが大切です。
 また、ある労働組合の集会では、就労が
 人間関係の形成に結びつかない場合が多く
 なっているとの話がありました。フリーターや
 派遣労働では、同僚と関係性を結ぼうという
 契機が乏しく、一人ひとりの労働者が孤立してしまう
 事例が目立っているとのことでした。
 SNEPイコール貧困者ではありません。ですが、
 SNEPの問題を考えるためには、貧困という
 問題を押さえる必要があると考えます。
 ○
 障害の状況と孤立の関係は、統計では
 分析できていないところです。
 貴重なご指摘だと思います。
 少し話しがずれますが、社会生活基本調査を
 用いた分析では、受診や療養の時間が生活の
 なかである人ほど、必ずしも強い傾向では 
 ありませんが、孤立無業にむしろ「なりにくい」
 といった特徴がみられました。
 健康状況を改善しようと「前向きに」受診や療養に
 取り組んでいる人は、その過程で応援してくれる
 いろいろな人たちに出会う機会も広がるということ
 なのかもしれません。
 反対に、健康がすぐれないにもかかわらず、何らかの
 理由で受診や療養を断念している場合に、孤立の危険
 が大きいのかもしれません。そこではご指摘のように
 やはり貧困問題も影を落としているかもしれません。
 これらの状況も、実態の解明が急がれます。